INFORMATION基本情報

• 所在地東京都千代田区皇居外苑1-1
• アクセス東京メトロ千代田線「二重橋前駅」徒歩5分

原型製作に約3年、完成までに10年の月日をかけてつくられた楠木正成像

原型製作に約3年、完成までに10年の月日をかけてつくられた楠木正成像 二重橋駅から徒歩5分のところにある「皇居外苑」。その一角にあるのが建武中興の忠臣であった楠木正成公（楠公）の銅像です。この「楠木正成像」は高さ約4m、台座を含めると約8mの高さを誇り、目の前にするとその荘厳な姿は圧巻。上野公園の西郷隆盛像、靖國神社の大村益次郎像と共に「東京の三大銅像」の一つとして数えられています。

手綱を引きながら馬を抑え、頭を下げ拝礼しようとする「楠木正成像」。この姿は、楠木正成公が正慶2（1333）年に、隠岐の島から戻った後醍醐天皇を、兵庫の道筋で出迎えたときの勇姿を象ったものです。

源頼朝が京都に入った際の従者「楠木四郎」を祖先に持つ楠木正成。かつての武蔵国の御家人であった楠木一族は北条氏に仕え、河内国の管理をするために河内に移ったと推定されています。

やがて、後醍醐天皇の倒幕計画に同調し、兵衛尉の官名を与えられた正成。当時、忍者の家系であった服部家の姻戚関係にあった正成は、服部家の協力を得て、敵を欺く忍者のゲリラ戦法を駆使し、後醍醐天皇の倒幕を成功に導いた人物として知られています。

愛媛県の別子銅山200年記念事業として献納された「楠木正成像」。1891年に東京美術学校（現・東京藝術大学）が製作依頼を受けました。別子銅山の銅を使い、頭部を高村光雲、身体・甲冑部を山田鬼斎と石川光明、馬を後藤貞行が担当しています。

もともと楠木正成の肖像は20数点残されていましたが、全て骨相が異なり、有力な参考資料はありませんでした。結果、正成の表情は、優れた軍略家の表情を再現することに重きを置いて、製作に取り組まれています。

甲冑は歴史画家であった川崎千虎が考証を担当し、楠木正成の所縁ある寺社や遺物を研究し、史実を補充しながら図案を完成させました。馬を担当した後藤貞行は、軍馬局から譲り受けた馬の屍体を解剖したり、自ら東北に出向き多くの馬の写真を撮影し、模型を作成し、細部を再現していったそうです。

銅像は木彫の原型製作に約3年を費やし、完成に至るまで10年の歳月がかけられました。多くの知見が集約され、時間と情熱をかけて製作された「楠木正成像」。ぜひ間近で見てその精巧さを観察し、迫力を体感してみてはいかかがでしょうか。

「楠木正成像」が建つ「皇居外苑」は、総面積約115ヘクタールにも及ぶ広大な国民公園。1949年に旧皇室苑地の一部が一般に開放されてから、今も多くの人が訪れています。園内は、皇居前広場を中心とする外苑地区、北の丸地区、そして12の濠によって構成されています。

像のある日比谷濠沿いのエリアは、散策の途中にひと息つくのにも最適なエリア。目の前には売店の「楠木茶房」があり、コーヒーや紅茶、抹茶などのドリンクに加え、手軽に味わえるスイーツも楽しめます。人気メニューは最高位茶師十段が厳選した宇治抹茶を使用した抹茶ソフトクリーム。苦味と甘味のバランスが絶妙な濃厚な抹茶の風味を堪能できます。

像から有楽町方面に歩いたところには、食事処「楠公レストハウス」が営業。ランチでは、唐揚げや焼き魚の主菜にご飯・味噌汁・漬物・副菜2品が付く定食のほか、鍋御膳、カレー、うどんなども用意。散歩の途中に立ち寄るのにぴったりのスポットです。

東京駅方面に歩くと見えるのが「和田倉噴水公園」。大噴水を取り囲むように多数のベンチや休憩スペースが整備され、日陰でくつろいだり、ランチを楽しむ人の姿があちこちで見られます。園内にある「スターバックスコーヒー」では、テラス席で噴水を眺めながらドリンクやスイーツを味わうこともできます。

桜や紅葉など、四季を感じられるスポットとしても知られる「皇居外苑」。ソメイヨシノをはじめ、ヤマザクラや八重桜など種類豊かな桜が植えられています。園内は外苑北側の代官町通りの桜並木や半蔵門近くの「千鳥ヶ淵公園」など、桜の名所が数多く点在。像の周辺エリアでもヤマザクラを仰ぐことができます。

紅葉が見頃を迎えるのは、例年11月下旬から12月上旬。皇居前広場のクロマツと紅葉が共生している景観や、お濠沿いのイチョウ並木が望めるのは「皇居外苑」ならでは。「楠木正成像」周辺でも、モミジやカエデが赤や黄色に色づき秋ならではの彩りを楽しめます。紅葉を背景に像を撮影すれば、この季節ならではの一枚を収めるのもおすすめです。

銅像は木彫の原型製作に約3年を費やし、完成に至るまで10年の歳月がかけられました。多くの知見が集約され、時間と情熱をかけて製作された「楠木正成像」。近くの売店やレストラン、カフェで一休みしながら、ぜひ間近でその丁寧な造形をじっくりと観察してみてはいかがでしょうか。