皇居・東京駅・日比谷 イベント カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語
イベント開催期間
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INFORMATION基本情報
開催期間 | 2025年9月13日(土)〜2025年11月9日(日) |
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開館時間 | 10:00~18:00(金曜日~20:00)*入館は閉館30分前まで |
休館日 | 月曜日(ただし9/15、10/13、11/3は開館)、9/16(火)、10/14(火) |
公式ウェブサイト | https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202509_india.html |
展覧概要
コレクターのカルン・タカール氏について
タカール氏はインドのデリーで母親の仕立屋を手伝いながら、幼い頃から染織品に親しんできました。家族で英国へ移住後も布や工芸への興味は尽きることなく、1982年からアジアとアフリカの染織品の収集を始め、その活動はやがて世界有数のコレクションを築くまでになりました。2021年には英国ヴィクトリア&アルバート博物館と協働でカルン・タカール基金を設立。「私はこのコレクションの束の間の守り人にすぎません」と語るタカール氏は、コレクションを積極的に博物館へ貸し出したり寄贈したりと、世界中の人々と共有することを大切にしています。
カルン・タカール氏からのメッセージ
幼い頃から日本に興味があった私は、30年前に日本の染織品を集め始めました。そして、日本の文化的、視覚的、芸術的、美的観念に夢中になりました。その一端は2015年に出版された書籍『銘仙着物:カルン・タカール・コレクション』(*1)と、2023年のロンドンでの展覧会「日本のリサイクル美学」(*2)で公開されています。
インド更紗は日本において何世代にもわたって愛され、珍重されてきました。更紗にどれほどの敬意が払われてきたかを示す記録や文献は、1600年代初頭にまでさかのぼります。この舶来の布は、茶道具の仕覆(しふく)をはじめ、風呂敷や煙草入れ、さらには掛け軸の表装や畳縁にも用いられ、日本の伝統に深く根ざしています。ごく小さな端切れでさえ、見本帖に貼られて大切に保存されてきたのです。
おそらく更紗は世界初のグローバル・プロダクトとも言えるでしょう。貿易の発展によってインドの職人たちは地域ごとに洗練されたデザインを制作することとなり、そうして生み出された染織品は、世界のデザインと感性の歴史に重要な役割を果たしました。
私が長年にわたってヨーロッパだけでなく日本、インドネシア、スリランカ、タイで収集してきた14世紀から19世紀にかけての染織コレクションは、これまで英国や米国の美術館で展示されてきました。
このたび日本のみなさまにご覧いただけることをたいへん光栄に思います。
*1 Meisen Kimono: The Karun Thakar Collection (Arnoldsche)
*2 “Japanese Aesthetics of Recycling” (Brunei Gallery, SOAS)
おもな出品作品の紹介
生命讃歌の樹
《白地立木形花樹文様更紗掛布(パランポア)》1740-50年頃、南東インド海岸部(スリランカで発見と伝わる)
中央に立木の模様が描かれたベッドカバーや室内装飾用の布「パランポア」は、インド全土で何百年ものあいだ作られてきましたが、これはヨーロッパ人の好みにあわせた白地のデザインです。パランポアはヒンディー語の「パラン・ポッシュ」、つまり「ベッドカバー」に由来します。ごつごつした岩山に力強く根を張り、大輪の花を咲かせた枝はねじれ、躍動感に満ちています。インドの宮殿やテントを装飾してきた立木モチーフの更紗は、海を越えてヨーロッパの人々の暮らしを彩る装飾品として人気を博しました。
花を摘む人
《白地人物草花文様更紗儀礼用布》17〜18世紀、南東インド(スリランカで発見と伝わる)

描かれた人物は、額の線と首にかけたルドラークシャ(菩提樹の実)の数珠によって、ヒンドゥー教のシヴァ派の信者であることがわかります。生い茂る植物に囲まれて立ち、祈りの儀式プージャーで使う花を摘んでいるようです。その優美な姿勢と指先は、特に繊細に描かれています。
チューリップと虫
《白地チューリップ虫文様更紗裂》1700-30年頃、南東インド海岸部(日本で発見と伝わる)
オランダ向けに生産されたと考えられる、斜めに配されたチューリップと虫だけの印象的なデザイン。ここに描写された赤と紫の2色のチューリップは、17世紀前半にヨーロッパで人気を博した近代的な栽培種を表しています。更紗の生産者たちがさまざまな国の需要にあわせてデザインを研究していたことがうかがえます。
インド版、聖母子像
《白地聖母子文様儀礼用布》18世紀、南東インド海岸部(スリランカで発見と伝わる)
インド更紗の名産地のひとつコロマンデル海岸で特別な依頼を受けて作られ、インドやスリランカのカトリック教会で祭壇の装飾に使われたものと考えられています。描かれているのは聖書を題材にしたモチーフの数々。左手に幼子キリストを抱え、右手には「聖母教会(カトリック教会)」の象徴である帆船を乗せた12の星を冠した聖母が三日月の上に立ち、悪を象徴する蛇を押しつぶしています。そのデザインにはインドの職人たちにしか作り出すことのできない独自の世界観が表れています。
子ども用の帽子にも
《白地花文様更紗女児用帽子》18世紀、オランダ
大航海時代が幕をあけ、ポルトガルやオランダの商人たちによってインド更紗がヨーロッパにもたらされます。それまでヨーロッパの染織品は色数も乏しく、素材は麻や絹地が中心でしたが、色鮮やかで伸びやかな模様に彩られた上質な木綿布を初めて見た時の驚きは、いかばかりだったでしょうか。やがて自国の産業を守るために禁令が出るほど爆発的な人気となりました。この帽子は、貴重なインド更紗をあますところなく使い切るため、小さな端切れをつなぎ合わせて作られました。
インドネシアで人気
《白地太陽文様更紗儀礼用布(マタハリ)》18世紀または19世紀、南東インド海岸部(インドネシア・スラウェシ島で発見)
「マタハリ」とはマレー語やインドネシア語で「目(マタ)」、「日(ハリ)」を指し、「太陽」を意味します。この布のように中央に「太陽」が描写された布は、インドネシアのジャワ島やスマトラ島南部で高い人気がありました。これは珍しくスラウェシ島で発見されたものです。
にぎやかな構図
《白地人物城郭文様更紗裂》18世紀、南東インド海岸部(スリランカで発見と伝わる)

上段中央に座る占い師の手元に並ぶ伏せた器からは蛇や鳥、サソリや果物が表れ、右手は印を結んでいます。左右には太鼓を持った人物、そして後方にはオランダ国旗を掲げた砦。下段は宮廷の様子なのか、たくさんの宝石を身につけた人物が従者になにか指示しています。右端の馬の上方にはトランペットのような楽器が伸び、にぎやかな音楽が聴こえてきそうです。
*作品図版はすべてKarun Thakar Collection, London. Photo by Desmond Brambley
*作品タイトルは展覧会開催時に変わる可能性があります